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「アカショウビンと真夏の紅葉!?」 [環境]


(一見美しいただの田舎の夏の景色ですが、森の木々を見てみて下さい)
 毎年初夏の頃になると南の島からなんともトロピカルな美しい鳥が美山の森にやってくる。鳥の名はアカショウビンと言って、川の宝石と呼ばれるカワセミや白黒模様が愛らしいヤマセミなど仲間で、鳩よりも大きく全身が真っ赤でさらに赤色の濃い大きな嘴をしていてる。見かければ誰でも判別が出来る派手な鳥なのだが、ほとんどの時をうっそうと茂る薄暗い森の中で過ごしているので、まず姿を見ることが出来ない野鳥でもある。
 ただし意外と数多く生息しているようで、早朝や、雨天時になるとまるで電子音のような、かなりの大きな声でキョロロロロロロロロ~~~と鳴き、その鳴き声だけなら美山町内どこででも聞くことが出来るのだ。
この夏は会いたくて~会えなくて~♪♪ 憧れ続けたアカショウビンに二度も遭遇する事ができ、その美しい容姿にとても感動した。

 さて、そんな風にまだまだ嬉しい出会いや、感動を与えてくれる、一見豊かで、懐深い美山の森の中にも、一方では近年の温暖化や酸性雨による影響がでており、軽視できない自然環境の悪化が進んでいる。温暖化などに起因するナラ枯れ病、増えすぎたシカによる下層植物の食い荒らしは深刻なレベルで進んでいる。また急激になる一方の気候と下層植物の衰退の二重の原因から相当な表土の流出、頻繁な土砂崩落などが山中の各所で起っている。
 そしてそれは山だけの問題ではない。淵や瀬の連続の中で織り成す多様な地形こそが豊かな渓流の生き物の生息環境であるその渓谷や河川は年々土砂で埋まってきている。源流域では大岩、小岩が形成する「洞(うろ)」が必要なヤマメやアブラハエといった渓流魚は明らかに衰退し、また本流では鮎にかつてのような繁栄は見られず、年々悪化をたどる状況に漁協や釣り人は頭を抱えるばかりである。

 このような自然環境の悪化。それは急激でもあるし、決して軽視できるものではないレベルである。しかしながら、そこに暮らす人、また、関心を持って暮らしている人以外には、まだまだ見えない、いや、見たくない? 避けていれば見えずにすむ。そう、たった今のところは知ってもらいたくても、知らずにすんでしまっているレベルでもあったのだ。

 そうしていよいよこの夏、誰の目にも明らかな顕著な現象が、美山の山林に起っている。


(上の写真のどんぐり紅葉部。拡大です。下部の健全な森はおおよそ杉の植林です。)

「真夏に紅葉」が始った。

 山腹の各所が紅葉している。場所によっては山の斜面の3分の1ほどもそうなっている所もある。本来無関心であろう観光客ですら「もう紅葉が始ったのですか??」なんて相変らずトボけてはいるが、さすがに一応は「おかしいな???」とは思う状況である。

 実際のところはナラ枯れ病の蔓延が次のステージ(悪化の段階)に進んだのだ。

 5,6年前から知る人の中で騒がれ始めたナラ枯れ病は、ナラ(どんぐり)の仲間でもミズナラという比較的湿潤な谷周辺に多い種類にほぼ限定されて蔓延し、今では明らかに美山の森の50%以上のミズナラが枯れ、絶滅に向かっている。そのナラ枯れ病は一部の学者はミズナラにしか蔓延しないと言っていたにもかかわらず、ここ数年では、ミズナラ以外のナラ(どんぐり)の仲間、コナラ、クリなどにもうつり始めた。そうして今年、コナラのナラ枯れ病が大ブレークした。

 コナラは美山の森の中でおそらく最も多いどんぐり(ブナ科)の木である。全森林のなかでもかなりの割合を占めている木で、それが一気に枯れ始めたのだからさすがに誰の目にも明らかなほど、山がいたるところで赤茶けている。美山に来て、山を見上げれば、無知・無関心な人でも相当な人が気付くレベルだ。そうして、今はまだおおよそ健全に見えるアベマキやクリにも明らかに病原菌とそれを運ぶ害虫は進入しており、更にこの秋も、また来年も、この「異常な紅葉」は進行するはずだ。
 今年のこのブレークについては個人的な、勝手な見解ではあるが、記録的な小雪だった昨冬の暖冬により、本来一定数淘汰されるべき病源菌とそれを運ぶ害虫が生き残ってしまい、この夏にその繁殖、拡散とともに急激に蔓延したのではないか考えている。つまりこのナラ枯れ現象も温暖化の副産物だという事だ。

 さてちょっと観点を変えてみて・・・・、
だいたい美山では平均的な大きさの1枚(1a:20m*50mくらい)の田んぼからは約400キロのお米が収穫できる。年間で一人当たり平均約90キロを消費するので、4人家族ならば、1家族分+@の収穫に当たる。毎日毎日食べるお米なので、都会の人たちが根拠無く想像するだけでも相当な量だと想像されるだろうお米の生産は、意外にも思えるほど小さな面積でまかなえているのだ。本当にお米は偉大である。私たちはこの小さな田んぼと、とても優秀なお米という植物によって生命を支えられていると言っても過言ではない。

 お次は森のクマさん。
さて、1本のコナラからどれくらいのドングリが生産されるのだろう?
さすがに僕もはっきり想像がつかないし、また熊さんはどれくらいのドングリを必要としているのだろうかも知らないが、きっと田んぼと同じように相当な量を生産しているのだろうな・・・・・・・。

そして少なくともいま紅葉しているコナラにはドングリは出来ない。
(枯れる前に出来かけて、熟していないものは一定あるかもしれないが・・)

この紅葉する森を見るだけで、相当な量である事は容易に想像できる。
そうしてまた容易に想像できる事は、この秋の熊さんの「食糧難」だ。森の食料が不足すると、民家近くの柿やクリを目的に里に下りてくるのできっと今秋も恒例の「クマ騒ぎ」になるだろう。近年そういった状況が豊作凶作に応じてほぼ2年周期で繰り返されているが、学者が謳っていた生息数よりも多くのクマが出没し、またその生息数以上の熊たちが害獣として、駆除されている。また、この秋もそういった感じで日本の各地で害獣駆除される事だろう。そうしてある時、山のドングリとともにたくさんいるはずだったクマさんも姿を消してしまうのかもしれない。

 熊を守るためには熊を守るのではなくてドングリを守らなくてはならない。

 再びアカショウビン。
こいつらは基本的に小魚やサワガニまた、カタツムリなどが主食である。
下層植物の衰退により森林のカタツムリは減っているかもしれない。また、土砂に埋まる山間の小さな谷の魚たちも減っているだろう。
ただし、沢が埋まっているような所が得意なサワガニはむしろ増えているかもしれない。
また、早朝などには里にでて捕食活動をするので、里にはカタツムリも事欠かずいるはずだ。同じく広い流れにでればまだまだ魚にも事欠く事は無いだろう。そう考えると今のところその餌に事欠く事はなさそうでもある。

 一方、渡り鳥でもある彼らは冬はフィリピンからインドネシアの辺りで生活をしている。
そこにはまだまだボルネオ島のような原始的な森も多く存在し、事欠かず生活ができているかもしれない。が、やはり東南アジアも中国と同様に近代化が進み、かなりの開拓が進んでいるという。きっとその国々の人々の大半は、日本人の大勢と同じように、アカショウビンの事などは露知らず、近代化を受け入れ、より快適に暮らせる事に喜びを感じている事だろう。

 今はまだたくさんいるアカショウビン。
「ああ、近頃はあっちもこっちもすっかり棲みにくくなったな~~~。」と会話しているかどうかは知らないが、あと何か歯車が狂えば、突如としてこの美しく愛らしい鳥が、たった今のドングリの木々と同じように、この美山の森から消えうせてしまう。
そんな気がしてならない。


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