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「森林を守る人」 [田舎生活]


(裏山の伐採作業中の中野良美さん)

 先週から田歌舎の裏山の杉の植林の伐採が始まった。
様々な活動の拠点になる広場を作り、周囲に果樹を植え、将来にかけて宿泊コテージを建てていく場所になる。
田歌舎の空間がまた広くなるのはとても楽しみだ。

 我が家周辺の杉を自分たちで伐採し、そして造成、基礎工事、建築を全て自分たちの手でやって今の「田歌舎」があるのだけど、今回の伐採は数年来の良い付き合いをさせてもらっている地元の林業家「中野良美さん」に伐採をお願いし、その補助作業を田歌舎のメンバーでする形で進めることにした。さすがに本職の作業はすばやく段取り良く進んでいる。しっかり見て盗んで次の伐採はまた自分達の手やろうと思っている。
 
 作業の後、例のごとく一杯やりながら、いろいろと話しをした。
先代から続く林業家のなかで、子供の頃から芦生の森を見つめて育った良美さんは荒れていく山林の現状と、その中で自分が出来る仕事を見つめる中、現代には稀なほど自然や環境、また教育に至るまで熱い思いを持っている人だ。そんな理由からも自然学校のプログラムにも協力を惜しまずにしてくれている。

 今の良美さんの本職はもちろん森林労働ではあるが、5年ほど前より関西電力の作業員として送電線の障害になる森林の伐採作業をしている。彼の技術が評価されて、安定収入を得るために、家族のためにもついたその仕事は関西電力の計画に基づいて行われ、山主との補償問題も大きく絡む中、おもに尾根づたいの美しい自然林の皆伐になることも多く、仕事とは言えその必要性を感じない場所、守りたいと思えるような木々においても伐採せざる得ない現在の仕事には正直なとことジレンマがあり、誇りを持てないということも聞くことが出来た。
 
 彼は本来植林の保全育成のための仕事を目指していた。植林といえばネガティブなイメージを持つ自然志向の方も多いだろうが、強烈な木材輸入国の日本が国土に於いて必要な木材を生産することは至極当然の事であり、植林であっても、理想的な手入れが行き届いた林には十分に他の生物にとっても生活できる場所にもなりうる。ただ戦後の行政の造林計画の見当違いと失敗が重なり、山主たちも手に負えなくなった植林放置が、現在の惨状を作っている訳で、その植林の保全活動は雑木の森を復活させる事と同様に、自然環境のためにも大切な仕事である。

 美山町の中でも、代を受け継いで現場での森林作業を営む若手はごくわずかで、多くはIターンの労働者に入替わってしまった。彼の持つ労働技術とスピードは町内ではもう1人の彼の相棒と並んでNO.1、NO.2と評される。そんな優れた労働者ですら自分の理想とする形でその仕事に従事できない現状はとても残念な事だ。ただ、その優れた森林労働者が清い目で山を見、自然を見、危機感を感じていることは、もし時代が良い方向に向き始めたときには偉大な戦力になるのだろうと思える。

 植林も自然林も同じく悲鳴を上げていること、食料に飢えて里へ降りてくる熊や、温暖化と共に増える鹿の食害、表土、土砂流失による渓谷の環境の悪化。山林の仕事師は猟師たち同様に誰よりも肌身に感じる事が出来る。ただ、生活を守るため、経済活動とのジレンマのなかで、多くの人たちが寡黙に与えられた仕事をこなしている。そして国の行政にはその声は届かない。
 
 ミサイルを作るための膨大な予算は近未来の日本の、地球の環境を守るために使われる事は無いのだろうか。心ある仕事師がまだ頑張っている内に、まだ間に合ううちに彼らの実力を発揮できる時代が訪れて欲しいものだ。


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三水可里予

こんな話が、もっと爆発的に多くの人に知ってもらえればよいと思います。
by 三水可里予 (2006-12-11 22:00) 

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